◇サヨナラ
正直、在校生はかったるい。
別に自分に
送られてる
わけでもない言葉を
長々と聞いて、
しかもそのあとに
卒業証書授与だって。
なんで一人一人
受け取るかな。
クラスでまとめて
もらっときゃ
一瞬なのに。
とくにすることもなく、
自分の髪を
いじくっていた
あたしの耳に
響いた名前。
『野崎謙太』
「…はい」
それは、
あたしがずっと
恋してた人の声。
ずっとあたしを
呼んでくれた声。