世界の終末に。


ならば、僕は彼女をなんと呼んでいたか。
つまらないのだけれど、僕はそのまま「山本さん」と呼んでいた。

彼女が苦手だったわけでも、距離を示したかったわけでもない。

情けない話だが、僕は女の子と話すことがとても苦手なのだ。

僕の話せる女性と言ったら、
母さんと奥さん、バイト先にやってくるおばちゃん達くらいで、同年代の女の子なんて恐怖の対象に近かった。

目のまわりを真っ黒にして、ムカデみたいなまつげをした女の子は勿論、教室の隅で漫画を書いている太った女の子も、女の子と名の付くものはすべてがすべて、苦手だった。

憧れていた河合さんだって、話したいと願ってはいたものの、話す機会が全くないことに感謝していたくらいだった。

そんな僕が、自分がエノちゃんと呼ばれたくらいで、山本さんに安易な名前、
そう例えば、
ヤマちゃんだの、モトちゃんだの、そんな名前をつけた上に、ましてや気軽に呼ぶだなんて絶対に出来そうになかった。

けれど、彼女はそれがとても寂しかったらしく僕が山本さんと呼ぶ度に、酷く寂しそうな顔をしていた。



ちょうど、それくらいの時期だった。

彼女はしゅるしゅるとしぼみだした。
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