世界の終末に。
痩せた、のではない。
縮まったのだ。
たぶん、まだ背が縮むような年齢でもないだろうし、現象で言うならばそれは「痩せた」のだろうが、見た目は縮まったとしか思えなかった。
僕はとても心配した。
ちょうどそのとき、僕の親戚のおじいちゃんが入院していた。
点滴のささった彼の腕は泣きたいくらいにやせ細っていた。
彼女の腕は、まだまだ普通の女の子たちに比べれば太かった。
わかりやすく言うと、以前の彼女の手首は普通の女の子の二の腕くらいはあった。
それが、肘あたりの太さに等しくなりつつある。
このままいってしまえば、彼女は親戚のおじいちゃんと同じ末路をたどってしまう。
心配した僕は、彼女のいない日に、コンビニの休憩コーナーにたむろしていたおばちゃんたちに相談してみた。
おばちゃんたちはみんな揃って僕を睨みつけて、背中をばんばん叩いた。お馬鹿!と言いながら。
1人のおばちゃんが言った。
「アンタのためにダイエットしてるのよ!」
僕は面食らった。
恥ずかしい話だが、僕はそのとき、彼女がダイエットをしていることに気付かなかった。
ダイエットという単語こそ、存在と意味を知っていたが彼女がしていることがそれだとは考えもしなかった。
余の辞書に不可能はない。
かの有名なナポレオンの言葉だ。
彼は不可能という言葉は知っていた。
けれど、絶対にそれを使ったり思ったりすることはなかった。
僕も同じだ。
ナポレオンも僕も、あまり変わらない生き物なのかもしれない。