世界の終末に。

そんな僕がバイクに乗りたいと言い出したとき、まわりはものすごく驚いた。
もともと、理工学部にいきたかった僕は機械が好きだった上に凝り性だった。
いとこのバイクを近くでみてから、自分も欲しいと密かに思っていた。
心配する母親と面白がる父親をよそに、教習とバイクのお金をつくるために人生初のアルバイト生活が始まったのだった。

記念すべき初のアルバイトに、僕は地元のコンビニを選んだ。
小学校時代の友達であった上林君のご両親が経営していて、お客も顔見知りのおじさんやおばさんばかりで、働きやすいいい所だった。

地味でパッとしない僕はおじさんおばさんの目、
「今時真面目な良い子」と映ったらしく、お菓子の差し入れをもらったり、バレンタインにチョコレートをもらったり、可愛がってもらっていた。 店長曰わく、隣の老人介護施設の職員のおばちゃん達からは
「プリンス」の名で通っていたらしい。

プリンス。
素晴らしい。
畑の多い、小さな町。青い看板の輝く小さな四角いお城。おなかの突き出たキングに、化粧の薄い、痩せたクイーン、メガネをかけた冴えないプリンス。
プリンスは在庫の点検とレジ打ちと掃除に精を出しながら、バイク購入という目的などとうに忘れ、どこかにプリンセスはいないものかねと店長と笑っていたのだった。
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