世界の終末に。
それから、プリンセス出現までの1年間、色々なことがあった。
まず、キングが亡くなった。
掃除をしているとき、ばたんと倒れてあっという間に帰らぬひととなってしまった。
死の直前、彼はモップで床を拭きながら、東京へいってしまった息子の上林君を案じていた。上林君は、当時東京にある大学で建築を勉強していたのだった。
その上林君は、父親の訃報を聴くなりすぐに駆けつけた。
上林君は泣き崩れる母親のその小さな肩を抱いて、涙をぼろぼろとこぼして泣いていた。
僕も、父さんや母さんと同じくらい慕って頼りにしていた彼の死に、涙がとまらなかった。
葬儀にはコンビニにきてくれたおばちゃん達をはじめ、町の人々がたくさんやってきた。
お金もそんなにかけられなかったのだけれど、良い葬式だった、と上林君はしみじみと言った。
そうして、僕らはお酒を飲みながら昔話をしたのだった。
上林君はいつかお父さんとお母さんに、大きな家を建ててやりたかったのだ、とぽつりと言った。
そう言った上林君の目がとても悲しそうだったので、僕は思わず
「ならば、お母さんのために家を建ててあげればいいよ」とものすごく間抜けなことを言ってしまった。
けれど、上林君はぷっと吹き出すとそれもそうだなと言って、またお酒を飲んだのだった。