世界の終末に。
プリンスと呼ばれている、僕
プリンセスと呼ばれている、彼女。
彼女には失礼な話だが、僕と彼女はなかなかにお似合いに思えた。そして、それは決して喜ばしいことには思えなかった。
僕も彼女も、あまり手入れのされていない田舎臭い髪型をしていたし、 その髪型に見合った野暮ったい格好をしていた。
まとう雰囲気やオーラも、だいたいそんな感じらしく、
僕等はある意味とても完璧なコーディネートをしていたことになる。
そんな2人が、揃いの制服を着てレジにちょこんと並んでいたら、おばちゃん達がこぞって言う台詞などわかりきっている。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、山本さんは何故か僕によく懐いた。(彼女にはこの言い回しがすごくよく似合う。)
不本意ながら、僕等は一緒に帰るようになり、彼女は僕をエノちゃんと呼ぶようになった。
エノちゃん。
僕の名字、「榎本」の頭二文字をとって。
僕は初めてエノちゃんと彼女が僕を呼んだとき、ドキドキした。
彼女に惹かれたからでは無い。
だいたい、僕はいまだかつてニックネームの類をもらったことがなかった。
エノちゃん、は僕にとって記念すべき初めてのニックネームだったわけだ。
彼女は今でもたまに、僕のことをエノちゃんと呼ぶが、そこにあまり深い意味は無い。
けれど、呼ばれる度に僕はあの日のようにドキリとしてしまう。
勿論、彼女はそんなことは知らない。
知らなくていいのだけれど。