水曜日、16時20分

頭 柚瑠子

いない。

机の上にはいくつもの空き缶が並んでいて、その中にタバコの吸殻が押し込められ入りきらずに山となっていた。

窓を開けてみる。

いつも先生の座っている椅子だ。

キしり

クらり

ぼんやりとしている。時間が、時間だけが過ぎ去っていく。

私はこうやって時間を積み重ねてたくさんのことを知った。

勉強のこと。先生のこと。家族のことも、今に比べれば昔は何も考えず、何も知らずに暮していたのだと思う。

空気の匂い、タバコの本数を数えてみる。

先生と私が出会ったのは雨の続く十月にぽっかりとあいた晴れの日の夜のことだった。

とはいっても、先生や私が別の学校から転校してきたというわけではない。

私は知らなかっただけだ。先生だって知らなかったに違いない。

先生がどう思っているのかは分からないけれど、私は信じている。

雨城先生がたくさんの生徒達の中から私を見つけたのではない。私が先生を見つけたんだ。って。
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