恋物語
さっきの質問で、先生に気持ちがバレてしまったかもしれない。

それは困る。

先生と今みたいに話せなくなってしまうのは嫌だ。

噂になった先輩は、気まずくて先生を避ける日々が続いていると聞いた。

そんな風になったら、麻紀は耐えられない。

今度こそ、未遂ではなく自殺してしまうかもしれない。

でも、先生なら大人だからきっとうまくやってくれる気もする。

こうして自問自答を繰り返し、本日最後の授業が終わっていった。




放課後、麻紀は日和に呼び出された。

「話って?」

誰もいない教室で、日和が何ともいえない表情でまきを見つめる。

「回りくどいことは嫌いだから、単刀直入に聞くね?」

そこで一回、日和が言葉を止めた。

何だか麻紀まで緊張してきてしまう。

「麻紀、中原先生のこと好きなんでしょ?」

驚いた。

麻紀は日和にそんなことを言われるなんて、思っても見なかった。

「何も言ってくれないけど、隠しても麻紀のことくらい分かるよ。好きなんでしょ?」

日和の口調は、有無も言わさぬ迫力があって、麻紀は反射的に頷く。

「そっか。そうだよね。中原先生、かっこいいもんね。好きになるの分かるよ。」

「・・・・・・まさか。」

日和も好きなの、と訊こうとして止められた。

「ううん、違くて・・・・・・あのね、麻紀。」

日和の大きな瞳が、麻紀をとらえる。

麻紀は、心臓がドクンと波打つのを感じた。

「先生、彼女いるよ。」




全校生徒が下校した後、しばらくして先生が帰り支度をして職員玄関から出てきた。

麻紀は真実を確かめようと、先生を待っていたのだ。

駐車場に向かおうとする先生の前に立ちはだかる。

「桜井!こんな時間までどうしたんです?もうとっくに下校時間は過ぎていますよ。」

先生が呆れたように溜め息をつく。

麻紀は、黙った。
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