マイスィートアフタヌーン
「はい?」


 窓からの光が背後から照らし、顔の細部がわからない。声は記憶を掠めているが、心当たりは浮かんでこない。


「あのどちらさまでしょうか。私が、シモンズですけれど」

「お客様? ここを使うなら帰りましょうか」

部屋の中から聞こえた声に、二人の視線がそちらに動く。


「ポーリィ……」


 つぶやきは完璧なまでのつぶやき。口の中だけで発せられたものだった。

彼の手からこぼれ落ちた帽子が床を転がっていくのを、メアリーアンは追いかけた。

ほこりを払い振り返ると、微塵も動かずそこに立ち続けている男を見る。
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