マイスィートアフタヌーン
紙を掴んで振り上げた手も下ろさずに部屋から半分はみ出していた、そんな格好の彼の背後から近づく影があった。

「フィデリティさん」

巡査のチャーリーの登場である。慄いている彼の様子には驚きもせず、

「コクラン刑事を訪ねてご婦人がお見えですが。どうします? 留守だと言いますか?」
もう?

「いや、聞いている。こちらへ通してくれていいよ」


 部屋に向き直った彼の肩は、いつもよりも落ちていたかもしれない。

客人の目の届かないレスリーのデスクに場所を空けて、手紙を念には念をとたたんで置けば、乱入者の放り出して行ったペンも気になり箱へと戻した。

大きくはみ出した椅子も気になり元へと戻し、そこで浮かんだ思いつきに、去りかけた巡査を追いかける。
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