きみに守られて
玄関扉にたたずむ父のわきに
扉にだらしなくぶらさがたっている
タオルをユリツキはみていた。
扉には何時も湿ったタオルが、
黒っぽく汚れ、
無造作にかけてあり、
家族三人はそれで顔を拭く、
人の汗が腐ったような匂いが
いつも漂っていた。
ユリツキはそのタオルを見て
漠然と懐かしいと思う。
巨大スクリーンは
コマ送りになり
一時停止をしたりと繰り返す。
ユリツキに盗んでこさせた白菜を
醤油でどろどろになるまで煮込み
それをユリツキに食べさせる母。
父は近所にユリツキを
借金に行かせた。
少年は思う。
(借金に行くのは怖いよ、
ラジカセとか重いし、
恥ずかしい、
でも嫌がると凄く怒るから行く。
でも、
お金貸してくれないのは
僕のせいじゃないよ。
だから、僕を殴らないで。
怖いよ、夜の道は暗いんだよ、
黒いんだよ、
黒い方へ僕・・
一人で歩いていかなきゃいけなんだよ。
最初の頃は父さん一緒に行ってくれたよね
”この子が明日学校に
金もって行かないとだめなんです”
って言っていたよね、
でも僕一度も
学校に持っていった事ないよ?)