きみに守られて
今回はなんて長い夢なんだと、
ユリツキは思う。
左手手首を眺めて輪ゴムを確認する。

輪ゴムがそこにある。
手首にある。悪夢だ。

顔を上げる。

父親の友人の性的虐待が
始まろうとしていた。


色白で目玉が窪んだ
彫り深い三十代後半の男がいる。

子供の尊厳など一切無視した
勢いで父親が布団をめくり
友人にほろ酔いで機嫌良く
「ここで寝ろ!」と、気楽に言う。

叩き起こされたユリツキは、
違和感を感じながらも
うつらうつらとしていた。

父親の友人は
酔った酒くさい口と
脂ぎって浅黒いざらっとした、
髭が伸び始めた顔を
まだ十歳そこそこの
白く滑らかなユリツキの頬へ摺り寄せて、

「一緒に寝よう」

薄れていく意識の中でユリツキは

「うん」とだけ応えた。

まもなくその無意識は
睡魔を切り裂くほどに
はっきりっとする。

男の手がユリツキの尻を
撫で回していたのだ。

何度も寝返りをして
ユリツキは手を拒むが、
とり付かれたように
執拗にその手はユリツキを襲った。
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