きみに守られて
一夜が明けたが
あいも変わらずユリツキに
睡眠は許されなかった。

一晩中ベンチに座り
何事も起こらない
時間の流れを満喫して
ゆっくり悪夢から覚めた実感を
噛み締めた。

朝、二人は朝食をとり
優里は
ユリツキの腕を急かすように握り締め
敷地内を案内する。
いちいちスカートの裾をひるがえし
彼女はユリツキに敷地内の説明をした。

その姿に改めて
自分とは一緒に居てはいけない
女性なのではと思う。

一通りの我家自慢が終わり
満足したのか優里は裏手にある
小高い丘の頂上で
お茶でも飲もうと誘う、。

一本の獣道、
前を歩くユリツキに少し後れて
首からステンレス製の水筒を下げて
ピクニック気分の優里が登って来る。

それ程高くない頂上に二人は座るが、
見晴らしが良い景色と蒼い空が
どこか高い山に登った錯覚を生んだ。

優里はカポカポと水筒のふたを回し
ユリツキに甘苦いコーヒーをすすめる。

野草が生える一面に
タンポポがあちらこちらに
ぽつりぽつりと檸檬のような
黄色の頭花をつけ、
白色の冠毛になるのを待ちわびていた。

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