きみに守られて
たまに吹く強い風は春の足音だった。

おっとりとした時間と風景が
ユリツキを和ませていた中、
優里が口を開く

「たんぽぽの若葉って
食べられるよ、今度食べてみる?」

真剣に言った彼女の顔が
なんだか可笑しくて、
たまらなく嬉しかった。
何も言わず笑顔だったユリツキ。

「なぁによ、
どうせ色気より食い気です私は。」
恥かしそうにそっぽを向いた 。

ユリツキは考えていた。
意識を閉ざしていた時に観た夢は
実際に彼が経験した事実だ。

彼は人生を二度繰り返していた。

ユリツキの思いは、
透き通る空に浮かんだ、
一筋の忘れ物のような雲の切なさがあった。

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