きみに守られて
「泥が付いて汚い手を差し出しても、
この時代、
誰も優しさだとは思わないだろう。
だけど何かのきっかけで
命の危機にさらされた時や
逃げ場がない時に
同じ汚れた手を差し伸ばせば、
その手は神と同じ手に変わるのに。
そんな時代じゃないか・・。
ぼくらが思う願いなんて
必要とはされないのかな・・。
何でも平等とか言って
差別とかを無くそうとしている人たちや、
自由で正しい世の中を
作ろうとしている人たちは
解っているのかな、
人間の本性を。
感情論に近い理想論を
声高々と訴えている人たち何人が
虐待を受け三才未満で死んでいった
赤ちゃんの死体の前で
同じ事を言えるのかな。
因果往訪って言う人や、
やたらと人に説教する人、
嘘で自分を固めた人、
それに気づかず嘘に塗れた人、
正論しか言えない人、
何人が言葉も覚える事無く
亡くなっていった子供の亡骸の前で
真実を語れるのだろう・・。
あ!ごめん・・
まだ”夢”のショックから
立ち直れていないね。
なんか危ない人みたいに
訳の解らない事を喋ったね。
なんか気が動転している。
ごめんごめん」
物悲しい目で呟いていたユリツキ。

「ちゃんと聞いてるよ、
意味も分かるよ、
だから私・・ユリ兄が好きだよ」
と、だけ優里は応えた。
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