きみに守られて
「でも、ユリ兄は得体が分からない物に
漠然と疑問を持ち、
地団駄を踏みながら戦ったのよ。
極貧が辛かったわけじゃない。
愛情が薄い環境で
育ったからじゃないよ。
自分と戦ったから辛かったのよ」

ユリツキは単純に
芯から嬉しくなって、
両手を大空にかざしたくふいに腕に力が入った。

「誉めてるわけじゃないから、
調子に乗らないでね」

ゆっくりとした流し目でユリツキは
優里を伺うように見た。
今にも吹出しそうな笑みがそこにあった。

「私が言ったこともしょせん、
今だから言ってあげられることなのよね。
何不自由なく育った私が知らない、
気付きもしないこと・・
いっぱいあるんだろうな。
それを考えると私がさっき言った言葉
まるっきり綺麗事だよね」
優里に顔に笑みなく
反省の色さえ見えた。

ユリツキの頭の中に
”慈悲”の言葉が浮かんだ。

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