きみに守られて
両目をしっかり閉じていたユリツキは、
人の気配が消えたのを感じて
片目を恐る恐る開ける。

優里の姿がなく
慌てて上体を起こし
見渡すと
スタスタ優里が丘を降りていく姿が
目に飛び込んだ。

「ほったらかしかよ!」
不良少年ぽく、子供ぽく、叫んだ。

振返った優里は後手を組み、
叫び返した
「好きだよ、ユリ兄!」と。


優里の背後でまで行き、言った。

「あのさ、
しょっちゅう好きって言ってると、
重みなくなるよ。
減っちゃうよ」
何気に言った。

「あらそう?私は違うよ。
言えば言うだけ増えるわよ」

「ふ~ん、そうなんだ」

”好きよ”という言葉。
この時ユリツキは、
米国人が挨拶代わりにする、
ハグと同じものだと思っていた。


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