きみに守られて
犬のタロウ。        

小学校から家に帰って来た時、
道路から一番良く見える木の根元に、
タロウがひもで縛れていた。

タロウの行動範囲は
短いひもで木から1メートル弱と
制限されている状態だった。

タロウはおふくろに
棒きれで殴られていた。

ぼくは母さんに
”何しているの?”と
聞いたけど、
母さんにはぼくの声など
聞こえていない感じだった。

それどころか
ぼくが居る事すら
気がついていない感じだった。

母さんの目は
人の目ではなかったよ。

ただタロウを殴り続けているんだ。

タロウは頭から血を流しながらも、
母さんにしっぽふっていたよ。
その媚びる姿が気に入らないのか
一段と強く殴り出すんだ。

ぼくは何もできなかった。
”やめてかあさん!”と
言った記憶はある。

タロウは悲しい声で鳴いていた。
タロウは服従の姿勢をとっても
殴られ、
逃げようとしても
殴られ、
痛くて
悲しかったろうな。

タロウは小さくなっていた。

棒きれが血のりで
べっとりした頃・・。
タロウは動かなくなっていたよ。

母さんは家の隣に流れる川に
タロウを投げ捨てた。

ぼくが良く、
意味も無く、
父さんに投げ込まれた川にね。

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