きみに守られて
 シロ。 
鼻と鼻をくっ付ける癖があるぼくは、
いつも犬や猫とそうやって
鼻のキスをしていた。

シロは特別な猫で、
そのキスを完璧に憶えた子猫だった。

顔を近づけるだけでシロは
自分から寄ってきて、
ぼくの鼻にツンツンと
鼻くっつけてくれた。

寝る時や朝起きた時も、
当たり前の行動で
習慣になっていたんだ。

ある日の朝からシロは
行方不明になった。
ぼくはやっぱり寂しかったけど、
嬉しい気持ちもあったりした。

この家に居るとまたいつか
殺されるかもという思いがあったから。

三日たった頃、
学校の駐輪場で
シロらしい猫を見かけた。

だけど家と学校までは
五キロ以上離れていたので
見間違いだろうと思っていた。

子猫の足でこれる距離ではないと
決め付けていたんだ。

その頃ぼくは新聞配達をしていて、
その二日後、
ぼくは新聞販売所で、
その日の夕刊が来るのを
待っていたんだ。
そしたら一匹の猫が
販売所に飛び込んできた。

薄汚い野良猫だったけど、
良く見たらそいつはシロだった。

鼻を近づけるとちゃんと
ツンツンしてきたよ。

シロはずっとぼくの後を
つけていたんだ。

多分学校で見かけた猫も
シロだろう。

そして、家から学校までの5キロ位、
学校から販売所まで三キロはある道を、

シロは何日もかけて
ぼくの後を追っていたんだ。

汚くなって
弱々しくなっていて・・

涙が止まらない程、愛しかった。

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