きみに守られて
上り線と下り線の二つの線路。
白線の外側にドライフラワーの儚さで、
今にも崩れそうな、
しなやかな女性が、
電車を見送っていた。
誰にも気付かれる事も無く、
正樹の妹、久美子の恋心が
遠く離れて行く。
親友、優里と共に。
くたびれた電車のロマンスシートで、
ユリツキの肩に額を預けて、
窓際に座った優里は、
自分の膝小僧を眺めている。
ユリツキは、
窓の外にある春霞に化粧された
山の稜線を、
指で撫でるように見詰めていた。
大地がふくれあがろうとする
豊かな土の香りと若葉の風が、
優里の前髪を微かに揺らす。
幾つかの照り返す激しい緑の森の中を
抜けた電車、気付くと、
正樹や久美子の別れ際に
一粒の涙も流さなかった優里が、
ユリツキの太ももを、
大粒の涙で濡らしていた。
白線の外側にドライフラワーの儚さで、
今にも崩れそうな、
しなやかな女性が、
電車を見送っていた。
誰にも気付かれる事も無く、
正樹の妹、久美子の恋心が
遠く離れて行く。
親友、優里と共に。
くたびれた電車のロマンスシートで、
ユリツキの肩に額を預けて、
窓際に座った優里は、
自分の膝小僧を眺めている。
ユリツキは、
窓の外にある春霞に化粧された
山の稜線を、
指で撫でるように見詰めていた。
大地がふくれあがろうとする
豊かな土の香りと若葉の風が、
優里の前髪を微かに揺らす。
幾つかの照り返す激しい緑の森の中を
抜けた電車、気付くと、
正樹や久美子の別れ際に
一粒の涙も流さなかった優里が、
ユリツキの太ももを、
大粒の涙で濡らしていた。