きみに守られて
東の空が白みかけた頃で午前四時すぎ
ユリツキの母親は腹痛で目覚める。

地べたにちょっとした穴を
掘っただけのバラック建ての便所が
外にあり、母親は一度表へ出たが
間に合わず、
家と便所の中間に
何本か植えてあった
杉の木の根元で
大便なのか小便なのか
自分でも分からず、
ただしゃがみ込み用をたした。

そこでユリツキは命を受ける。

母親は自分の体から出て来た
白くぬるっとした物体に腰を抜かした。

足を大きく開いたまま
杉の木にもたれ掛かり
父親を叩き起こすほどの
大声を上げ助けを呼ぶ。

何事かと外へ出た父親は
慌てふためく。

なんら手当てが思い付かず
隣の家へ掛けこみ助けを求める。

母に触れぬ父、
ぐったりとした我が子に触れられぬ母。

思いも寄らぬ
天から授かった汚物の前で
身を凍らせる両親。

数分が過ぎる。
幸いにして隣の住人が
赤子の背を叩き、
その生きる道が示された。
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