黒王子と銀の姫
「寝所をともにする気はありません」

そう告げた途端、劇的なほどに相手の顔色が変わるのを、イリアは冷ややかに見下ろした。

「そ、それは、どういう意味ですの?」

困惑顔で訊ねられ、わざと意味深に微笑んだ。

「申し上げた通りです。第四王子は男色家だという噂を、耳にしたことぐらいはおありでしょう?」

「でも、でも……」

「私もあなたのお噂は色いろと聞いていますよ、色いろとね」

こんなことを口にするつもりはなかったが、まとわりつかれても面倒だ。

逃げるように部屋を出て行く足音を聞きながら、イリアは重いため息をつき、手付かずのまま、部屋に残されたスープを一瞥した。

< 108 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop