黒王子と銀の姫
「マルグリット様は、このことをご存知で?」
「母上がご存知のはずないだろ?」

胸元に強引に押し付けられた虫取り網を、どうでも良さそうに床に放りながら、セナは唇を尖らせた。

「そうですね、ご存知のはずがない。今日は朝からご実家に、つまり、あなたの伯父上のお屋敷にいらっしゃるのでしたね」

「何がいいたいわけ? 母上はいらっしゃらなくても、兵はいるよ。力ずくであの子を取り返しに来たのなら、喜んで相手になるけど?」

イリアを遠巻きにしていた兵士たちが、一歩ずつ前に進み出た。

包囲をせばめられても、イリアは眉一つ動かさなかった。


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