黒王子と銀の姫
「兄上は本当にお元気そうだ」

意味深な呟きとともに、イリアはソファーに腰掛けた。

「公の場に姿を見せてくださらないのは、お身体が弱くて公務に耐えられる状態ではないからだと伺っていましたが、そんな風にはとても見えない」

「元気じゃ悪いのか?」

ソファーの腕置きに肘をつき、冷ややかな笑みを浮かべた少年を、セナは不気味な思いで見下ろした。

大切なものを奪われて、あわてふためいているかと思ったのに、そんなそぶりは微塵も見せない。

十年ぶりに会う弟は、ほんの子供だった昔に比べると、はるかに凄みを増していた。


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