黒王子と銀の姫
「噂って何だ!? 質問に答えろ!」

イリアはずらりと並んだ兵士を一瞥し、兄の方に向き直った。

「もうずいぶん前のことですが、蝶の収集に飽きた兄上が、気に入った少女をさらってきて、監禁した上に殺してしまったと、ふれて回った者がいたそうです。妙な噂が広まったせいで、マルグリット様……あなたの母上は、あなたを正式な場所に出さなくなったのだと……そういう噂です」

第三王子の顔がこわばった。

「僕は……僕は、殺していない!」
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