黒王子と銀の姫
「兄上がそうおっしゃるのなら、ただの噂に過ぎないのでしょう。ただ、この国は大きくなりすぎました。何を犠牲にしてでも権力を手に入れようとする人間がうようよしている。顔を知られていなければ、別の人間とすりかえるのは簡単だ。不要になれば闇に葬ってしまえばいい」

「すりかえるって、僕のこと? 僕では王位につけそうもないから、別の人間にすりかえるために、公の場に出さないようにしているって言いたいの?」

兄の言葉を聞きながら、イリアは心の中で冷笑した。
ワナにかけるまでもなく、ちょっと道筋をつけてやるだけで、自らワナにはまるやつもいる。

手加減してやるつもりは、さらさらなかった。


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