黒王子と銀の姫
「……復讐劇……」

吐息まじりに呟いた。

イリアの言うことは難しくて、昔も今もなぞなぞみたいだ。
なぞなぞならヒントがあるけど、イリアの言葉にはそれがない。

つまり、ヒントのないイリアの言葉は、なぞなぞなんかじゃない。
当の本人は、難しいことを言っているつもりは、ないのだろう。

初めて会った時、ユーリはイリアを憎んでいた。
あからさまに命を狙っていた。
イリアを殺せば、大切な人たちを奪ったことに対する、復讐になると・・・。

(あれ?)

今さらだが、ユーリは剣を持っている。
剣術だって、そこそこ身につけた。
小姓という名目で、当たり前のようにイリアのそばにいるのだから、その剣をイリアに向かって振り下ろすことは簡単だ。

でも、ユーリに剣を与えたのは、他ならぬイリアだ。
何のために?
ユーリの復讐を遂げさせるために?

「はは、まさかね!」

そんな物好きは、世界中探したって、いるはずがない。





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