黒王子と銀の姫
「クリムゾン」

声に振り返った従者の顔は、淡い憂いをたたえていた。

それでも、澄んだ空色の瞳でイリアを見つめ、促すように微笑んだ。

「どうして俺の命令に従わなかった?」

「ユーリを連れてここを出て行けと言われて、私がほいほい従うとでも?」

質問に質問を返されて、イリアは無言で目を伏せた。

「正直、少し迷いました。でも・・・」

言葉を途切れさせたクリムゾンは、カップに紅茶を注ぎ終え、静かに部屋から出て行った。



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