黒王子と銀の姫
「頭が良すぎるということは、本当にやっかいだ」

おまけにあの方は不器用で、こうして一人にして差し上げなくては、感情を出すこともできない。

ユーリを手放してしまったことで、救いの道は絶たれたか。

自分にできることは、その時まで王子のそばにいて、ただ傍観することだけなのか。

クリムゾンが王子の気持ちに気づいているように、王子もまたクリムゾンの気持ちに気づいているのだろう。

確かに、クリムゾンはユーリを愛している。

だが、それがどうだというのだ。

金の髪が夜風になびく。

細い月を仰いだまま、クリムゾン彫像のように動かなかった。


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