黒王子と銀の姫
ほっそりとした背中だった。

食欲がないところをみると、体調だってよくないはずだ。

それでも背筋を伸ばした後姿は、まぎれもなく王族のそれだった。

「クリムゾン」

背中越しに声をかけられて、クリムは前に踏み出した。

「まだいたのか。お前はつくづく物好きだな」

冷めているのに、どこか悲しみを湛えた声だった。

「心配なさらなくても、他の者には暇を出しました」

「グノーは?」

「ここ数日、姿が見えません」

イリアは軽く頷いた。

それ以上、追求する気はなさそうだ。






< 216 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop