黒王子と銀の姫
「放して! イリアに何をするの!」

ユーリははじかれたように立ち上がり、男の腰にしがみついた。
けれども、軽々とあしらわれ、無様に床にはいつくばった。
再び立ち上がった時、ユーリの手には抜き身の剣が握られていた。

「放しなさい!」

背中に剣を突きつけられた剣の感触に、グノーは無言で振り返り、軽く息を飲んだ。
紫の瞳が燃えている。
初めて見た時もそうだった。
敵兵に囲まれ、断崖絶壁に追い詰められながらも、紫の瞳は強い光を放っていた。

髪を切り、軍服をまとった姿は、一見すると少年のようだが、どんな姿をしていても、生来の美しさまでは隠せない。

白磁の肌、銀の髪、輝く瞳、完璧な美貌、ほっそりとしたしなやかな肢体、自然と備わった気品。

花で言えばまだ蕾だ。
だが、女らしく着飾って出るところに出れば、その手を取るために、あらゆる男がその足元に跪くに違いない。





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