黒王子と銀の姫
「グノーがユーリを妻にすると言っているのは本当なのか?」

兵士にひきずられるようにして、一歩一歩階段を上るイリアを、ローズは高いところから見下ろしている。

唇は微笑んでいるのに、その目は笑っていなかった。

「残念ながら本当よ。そうでなければ、あなたも、あの娘もとっくに殺されているわ」

「どういうことだ? 革命は成功したはずだ。革命軍を率いていたのは、アルミラに奴隷として連れて来られたリタニアの貴族だったはずだ。リタニアの王女を殺せば、カリノ家は……」

「うふふ、いやですわ。さっき本人も言っていましたでしょう? 自分は戦場で兵士に殺されるところだったんだって。ユーリ・スタインベルグがアルミラの第四離宮に匿われていたことなんて誰も知らないんだから、このままいなくなったってかまわないんじゃない?」

「だが、ユーリの従者が……」

「そんなことまでご存知なのね? 私のことには全く無関心だったくせに」

ローズは不快げに眉を寄せ、そのままくるりと背を向けた。

よろめきながら階段を登るイリアの腕を、甲冑の腕が掴んで引き上げた。

背中に刺さったクリスタルの破片は、肺に到達する直前で止まっていたが、傷が化膿し、高熱が続いたせいで、イリアの体力は極限まで奪われた。

今ではだいぶ回復したものの、まだ、まともに歩ける状態ではなかった。










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