黒王子と銀の姫
どんなに叩いても、扉は固く閉ざされたままだった。

血が滲んだこぶしをにぎりこみ、扉にすがりいたまま、ユーリは崩れるように膝をついた。

朝なのか、夜なのか、暗い地下室にいたのでは、わからない。

イリアが出ていったのは真夜中だった。

見せしめの意味を持つ公開処刑が、真夜中に行われることなどまずないが、夜はとっくに明けているかも知れない。

(夜が明けたら……)

ぞっとして、震える身体を抱きしめた。

イリアが傷を負ったのは自分のせいだ。

負担に思う必要なんて少しもないのに、好きでやっていたことなのに……。

さっき、イリアから奪い取った手燭が、足元に転がっていた。

引き寄せられるようにそれを拾い上げ、尖った芯を凝視する。

こんなもので、命を絶とうとするなんて。

どうしてわかってくれないのだろう。








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