黒王子と銀の姫
それは明け方近くのこと。

決して開かなかった扉が音もなく外側から開いた時、ユーリは泣き疲れて眠っていた。

「ユーリ」

くぐもった囁き。
でも、重いまぶたは持ち上がらない。

「疲れているんだな」

気遣わしげな声が、さっきの囁きよりも鮮明に耳朶を打つ。
起きなくちゃと思った時、ふわりと身体が持ち上がった。

ぱちりと目を開いたユーリは、自分を抱きかかえている「それ」を見上げて、思わず悲鳴をあげかけた。

「きゃっ……」

その途端、ベッドに乱暴に放り投げられ、固いもので口をふさがれた。

滅茶苦茶に暴れたところで、びくともしない。

ユーリにのしかかっているのは、あの銀色の甲冑に身を固めた兵士だった。

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