黒王子と銀の姫
「ユーリ、俺だ、クリムゾンだ!」

顔をすっぽり覆った兜の奥から、あわてたような声がした。
思いっきり抵抗しながら顔を背けていたユーリは、全身で相手に向き直った。

「クリム……ゾン?」

窮屈そうに取り去った兜の下から現れたのは、金髪碧眼の優男だ。

「クリム、イリアが!」

全身で抱きついてきたユーリの背中を、甲冑に覆われた腕で不器用に撫でながら、クリムゾンは地下室の闇に目を向けた。

革命の日、クリムは城を出ろという主君の命に背き、王侯軍を指揮して防戦していた。

激しい砲戦で味方の兵はわずかとなり、城壁が崩れ、もうだめだと思った時、革命軍の攻撃がぴたりとやんだ。

振り返った目に映ったのは、王宮の窓に高々と掲げられた革命軍の旗だった。

(誰が、いつ、どうやって……)

次々と浮かぶ疑問に答えるように、固く閉ざされた城門がゆっくりと内側から開き、クリムゾンの同僚で、ずっと行方不明になっていたグノー・ジュリアンが現れた。






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