黒王子と銀の姫
クリムゾンとともに、カリノ家の地下室からの脱出を果たしたユーリは、その足でアランとシンシアを探したが、ユーリが知っている二つの隠れ家は、どちらもぬけの殻だった。

あせったユーリは革命政府の幹部と面会して直接確認しようとしたが、クリムゾンにあっさりと却下されてしまった。

「革命政府なんて名ばかりで、実質的に国を牛耳っているのは、圧倒的な資金力を持つカリノ家だ。反政府革命が、いつの間にかカリノ家によるクーデターにすり替わっちまった」

「で、でも、革命軍には、リタニアを含め敗戦国から連れて来られた人たちが加わっていたはずで・・・」

懸命に訴えるユーリを気の毒そうに見下ろしながら、クリムはなおも言葉を紡ぐ。

「戻れる者はさっさと国に戻ったさ。これだけアルミラが弱体化していれば、自国の軍隊を率いて戻ってくる可能性は十分あるけどな。国がなくなった者は、カリノ家と対立して処刑されたり、王宮の地下牢につながれたり、かつての政府軍との市街戦に駆り出されたり、ま、あまり良い目には、あっていないようだ」
< 274 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop