黒王子と銀の姫
「俺はアルミラの第四王子、イリア・アルフォンソだ」
「・・・・・・」

「怪我はないか?」
「・・・・・・」

イリアが一歩近づくと、子供はじりりと後ずさった。

たった一人で戦場を逃げ回っていたのだから、警戒するのは当然だが、そのたびに、土砂の一部が小石と一緒にはじけ、パラパラと崖下に散り落ちていく。

近づけるぎりぎりの場所で足をとめ、イリアは相手を観察した。

煤で汚れた頬に、涙の跡がある。

だが、そんなことはどうでもいい。

それよりも、イリアの目を引いたのは、この状況下にあって、ひるむことなくこちらに向けられている紫の瞳だった。







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