ゆめ・うつつ(さみ短3)
いっそ、武士がいた時代に行けたらいいのに。


農民でも、実力と志があれば武士になれた、幕末の時代。
わずか150年ほど生まれる時が早ければ、悟志もあの時代にいたかもしれないのだ。
たとえその時代に生まれたとしても、自分の腕では生き残れなかったかもしれないが。


「戦いのない時代というのは、いいな」


ビールを飲み干して、悟志は、呟いていた。
言ってから、自分で、驚く。


「悟志にしちゃ、ずいぶん平和的な物言いじゃんか」


健が、笑う。


「まるで、もう武士になったみたいだぜ」
「そういうわけじゃないけどさ」


まるで考えたことのなかった言葉。
だけど、口にしたら、ずっとそう思っていた気さえしてくる。


「まぁ、他の国では、いつでも戦争はしてるけどな」
「……そうだな」

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