ゆめ・うつつ(さみ短3)
「ハチに食わせてやろうと思ってな。栗を焼いてもらってきた」


そう言って、小太郎が懐からいくつも大きな栗を取り出す。


(ああ。ほんとにおいら、小太郎にとっちゃいつまでも手のかかる子供だ)


八郎は、笑った。


「まるで、村の童だな」
「うるさい。木の実は精がつくし、薬にもなる。おまえの身体にもいいはずだ」
「秋の味覚だ、ありがたく頂くか」


小太郎が不器用にむいた栗の一粒を、八郎は右の掌に受け取って、口に放り込んだ。




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