ストロ*ベリー
ストロベリーな君
「メロンパンとコーヒー」
そう言って、ヤツはさも当たり前のように500円玉を突き出してきた。
「……やだ」
「あぁ?」
私が嫌がると、彼は鋭い横長の目で睨んでくる。
「う、嘘です嘘です!」
学校一の不良に、最近転校してきたばかりの私が勝てるわけがない。
だからこうやって、毎日毎日ヤツの昼飯を買いに行かなければならないのだ。
ヤツに聞こえるくらいに大きなため息をつき、売店へと向かった。
「おい!」
後ろからヤツの声がする。
「なに?」
「コーヒー。ブラック買ってきたらぶっ殺すぞ」
「……はいはい」
細見 壱檎(ほそみ いちご)。
学校一の不良のくせに、名前は‘いちご’。
しかもかなりの甘党で、この前ブラックコーヒーを買ってきたら本気で怒られた。
私が飲んでいたイチゴオレを無理やり奪われたこともある。
なんだか憎めないヤツなのだ。