【短】愛鍵。
「店長に事情話したらさ、今日は早めに帰って良いって言われた」


笑ったとき見えた白い歯がまこちゃんの肌の色とよく合っていて、なんだかいつもよりも愛しく思えた。

まこちゃんがあたしの横に歩いてきたかと思うと「持つよ」と言ってあたしの手からスーパーのビニール袋を取った。


手が触れた瞬間に鼓動が激しいリズムで鳴り出した。


まこちゃんと触れた指先が熱を持つ。


しばらく会わなかったからかな?

小さなことでもドキドキする。


その時、あたしの中にあの場面が浮かび上がった。
不安になるくらいの場面。


『まこちゃんさ、この前、女の人と腕を組んで歩いてなかった?』


「は?」


『あたしがまこちゃん家に行かなくなってから、しばらくして見たんだよ、あたし』


傷つくかもしれない、まこちゃんの次の言葉をきいたら。


でも、でも、ききたい―――。



「あ~、あれか」


あたしは心の中で神に祈っていた。


「あれ、姉貴」


『・・・え?』


ええええぇぇぇ!?

お姉さんなの?




< 32 / 36 >

この作品をシェア

pagetop