Kissシリーズ・「電車でのキス」
人気の少ない電車の中に、同じように花束を持った彼がいた。

彼の学校も、卒業式だったんだろう。

これで…彼の姿を見るのも、最後。

わたしは彼の真向かいのイスに座った。

彼は花束に視線を向けたまま、動かなかった。

きっといろいろと思い出しているんだろうな。

わたしも…思い出す。この三年間、彼を見続けたことを。

そして電車は、わたしの町に止まりそうになる。

このままじゃっ…本当に何もないまま終わってしまう!

わたしは立ち上がり、彼の前に来た。

「あっあの!」

「えっ…」

彼はきょとんとした。

「おっ覚えてないかもしれないけど、前に電車で助けてもらった者です。こっこれ、遅くなったけどお礼です!」

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