蒼いキズ
「そうかな?」コウタは内心プライドを傷つけられたような感覚におそわれたが、よく見ると確かかに、全体のバランスがそこで決まるように感じた。


「でも、いいか」彼女がぶっきらぼうに言った。

「確かに、あそこにワンポイントあったほうがいいかも」


コウタは戻り脚立に登って考え込んだ。


何を飾ろうかなと彼女に言おうと振り向いた瞬間、彼女は廃材で作られた花の形をしたオブジェを、脚立の上にいるコウタに背伸びをし、両手をいっぱいに伸ばし、コウタに渡した。


コウタはそのオブジェを貰う瞬間、彼女の顔見、なんて綺麗な目をしているだろと思い。


又、手渡せられたその手は、色が白くぷっくらしていて、赤ちゃんの手のような愛くるしい愛しさを感じた。


「ありがとう!」コウタは御礼を言いながら、今この時間がずーっと続くことを願った。


コウタはそのオブジェを飾り、後ろ向きから脚立を降り彼女を見ようと振り向いたら、もうそこには彼女の影も形もなくなっていた。


コウタは辺りを必死に捜したが、見当たらず、何か愛しさが、こみ上げてくる心残りの彼女の残像だけが残っていた。
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