羽化
帰り道、人気のなくなった路地裏で自分を尾行していた人物が距離を詰めてきたのが洸には分かった。

二人か。

振り向き様に身を低く足払いをかけ、一人転倒させる。
「ゴホッッ!」

ミゾオチに肘打ちをかまし、意識を飛ばす。

洸のドレス姿から、抵抗やましては戦闘は予想想していなかったのだろう、アッサリと一人片付いた。

一瞬の出来事で、何が起こったのか信じられない気持ちではあったが、もう一人は、それに怯むことなくナイフを出して脅してきた。
いくら気が強い女でも、刃物をちらつかせ、少し痛い目をみれば大人しくなる。
「顔に傷とか嫌だろ?言うことを聞け!」

極上の獲物を前に興奮しているようだ。大方、女をさらい、なぶりものにしたあげく売り飛ばして生計を立てている輩だろう。

洸は相手が人間な事を確信した。

一瞬で間合いを詰め、男の急所へ蹴りを入れるフェイクをかけ(戦い慣れている場合、急所に防具を入れていることがある)そのまま膝を曲げ振り上げる。曲げた膝をスピードにのせ伸ばすだけで、男は地面に崩れ落ちた。
爪先で顎を蹴り、脳を揺らしたからだ。

呼吸一つ乱さず、洸は優雅に歩いてその場を去った。
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