幾千の夜を越え
移動教室の廊下、
薄暗い階段、
運動部の部室、
渡り廊下を挟んで道場、
四方を校舎に囲まれた中庭には

当然誰も居るはずがなく。

「あの…話って言うのはね…」

人目の付き難さから
いわゆる告場のスポットで
俺自身何度ここに足を運んだか…

「話っていうか相談なんだけど」

そういや前にダブルブッキングしたこともあったっけな。

「私、彼氏居るんだけどね…」

あん時は笑えた。
二人同時に『お願いします』って

「彼氏とのエッチが合わないの」

根負けして返事待たずに
逃げ出した方を食ったっけ

「へぇ〜」

適当に相槌を打つ。

「他に相談出来る人も
居ないから…」

だからって何で俺?
俺知り合いじゃねぇし…

「右川君なら、慣れてるから」

俺は自慢じゃねぇが、
女の扱いなんて知らねぇよ。

「ぅん〜買い被り過ぎじゃね?」

俺のは唯の大食い…。
乗ってんのは女の体で、
相談なんて乗りゃしねぇんだよ。

「謙遜?」

しねぇよ。

「皆、噂してるよ?
処女でも必ずイカせる…
凄くテクニシャンなんでしょ?」

はあ?
勘弁してくれ…

「噂って?
何かの間違いじゃねぇの?」

じゃねぇと困んだよ。
葵の耳に入っちまう。

「確かに噂だけで右川くんと、
エッチしたって子はいないけど」

口止めしといて良かった。

心底安堵して、
バレねぇ様に息を吐く。

「ほらな?
役に立てなくて悪かったな」

片手を上げて
立ち去ろうとする
俺の手を掴んだ。

「待って噂でもいいの」

今度は何だよ?

振り払おうとする女越しに、

一人のチャラそうな男に
手を引かれ連れてかれる

葵の姿が目に飛込んだ。

「ちょっと悪ぃ…」

女の手を掴み
乱暴に振り解く。

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