幾千の夜を越え
いつか来た
プラットホームに降り立つ。

「神亡…」

予感は確信へと変わっていく。

居る。

いつかは感じることさえ出来なかった気配が今はビリビリと痺れる程に強く感じられた。

近付くに連れ酸素が足りない高山にでも登っている感覚で息苦しさを感じる。

「よお…待ちくたびれたぜ」

悠然と目の前の岩場に足を組んで座る男に俺は詰め寄る。

「教えてくれ!葵を守る為に俺は何をすれば良い?」

肩で息をする俺を怪訝な目で見てあからさまに溜め息を漏らす。

「鍵は慎輔が持ってる鍵穴は葵にあるのにな…」

意味深な言葉を呟くが。

「まあ良い、順を追って行くか?先ずは右近が生誕したところから始めようぜ!」

一人楽し気に目の前に降り立つ。

「そんな間怠っこしい事言ってる場合じゃないんだ!」

掴み掛からん勢いの俺を
意に介さず。

「何だ案外気が短いな?
生誕した頃ってのは悠長過ぎたが慎輔は思い出すべきだ。
右近に尊に何が遇ったのかを」

「何がって…何んだよ?」

向かい合う男は俺から見ても
非の打ち所のない秀麗というか…艶麗な男だった。

「発端は何だった?
平穏無事の暮らしを尊といられた幸せを壊したきっかけは?」

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