幾千の夜を越え
「…何に伝染ったんだよ」

男の言葉の何に引っ掛かったのか解った気がした。

「うつった…」

もう一度だけその言葉を呟く。

何に伝染るのか?
伝染る物なのか?

感染経路は井戸で間違いない。

「バクテリアか…」

井戸水からならバクテリアなどの微生物が原因だろうが…。

右近が村へ下りた理由は尊への、脅しの文矢を受け取ったからだ。

バクテリアの繁殖を知り
好都合と文矢を放った…。

そう考えれば確かに辻褄は合う。

だが何か釈然としない。

「何を根拠に感染経路を特定したんだよ?」

男の問いに考えを否定された様で不機嫌に答える。

「接触も空気感染しないなら経口感染が一番怪しいからだ!」

その答えに感心した様に頷き、

「で…しないと思う根拠は?」

重ねて問いかける。

「婆さんが見覚えない男を見た!誰とも接触しなかったと証言してる!」

憮然とした態度で答えた。

「成る程…ならその男は感染者が出る前の村へ偶々立ち寄り感染を予言してお前を誘き寄せたって、そうゆうことだな?」

悠然と語る男の言葉で気付く。

右近は最初から気付いていたから《誰が?》と聞いたんだ。

「そういや…自生している野草の中には毒になるものが数多くあるって知ってるか?」

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