幾千の夜を越え
何でだ?
また茜の仕業かよ?

「待ってまだ終わってない」

振り解いた腕を
再び絡ませてくる。

「悪ぃけど、マジ急いでんだよ」

引き抜こうにも、

「お願い最後まで聞いて」

渾身の力で絡み付く腕を
力ずくで引き離すことが
出来るはずもなく…

「頼むよ」

葵が危ねぇかもしれねぇんだよ
見るからチャラ男のヤローに
道場裏なんて引き込まれてみろ
確実にヤラれる。

「後で戻っから」

どう考えても不抜けヤローに
諦めさせんのが、
目的って感じじゃねぇよな?

「その後で相談乗るし」

葵はNOがはっきり言えねぇ
頼まれれば何でも引き受ける
しつこく言い寄られりゃ
断りきれねぇ…

「じゃあ、私とエッチして」

「あぁ〜?」

何言ってんだこの女…
男が居んだろ?

目の前で俺の腕にしがみ付く
女のイカレタ発言に、
思わず思考が停止した。

「冗談?」

ふるふると首を振ってる。

「好きな男が居るのに
俺に躰開けんの?」

今度は縦に大きく一回振った。

最近の女はそんなものなのか?
葵も本当はそうなのか?

…なわけねぇよな?

「何が目的なわけ?」

「…私、不感症かもしれない」

はぁん…成程ね。

「気持ち良くねぇの?」

小さく頷き俯く。

「彼氏が下手なんじゃね?
もっと自分の意見言ってみ?
キスして欲しいとか、
どこが良いのかとか」

ふるふると首を振る。

「なら口でしてもらってみ?
気持ち良くなっから」

首を振り続ける。

「あ〜っ、恥ずかしい?
エロい女って思われると思う?」

首の動きが止まった。

「なら誘導してみる?
目線と声使って」

潤ませた瞳で見上げられ、

「そゆうさ、濡れた瞳の上目使い
男は弱ぇから…。
序に、馬鹿だからさ、
鳴き声に強弱付けると、
ポイント攻めてくっから
大袈裟にならねぇ程度に
自分の良いとこ教えてやんな?」

腕から力が抜けた隙に

「頑張れよ?」

解く。

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