幾千の夜を越え
走り寄る右近に塞がれた裂目にも戻れず逃げ切ることも出来ないと判断した亡者が襲い掛かるが

「邪魔だ!」

右近の力が暴走し瞬く間に空は陰り雷鳴轟かせ暴風吹き荒れる中、暴雨と共に降り注ぎ八裂きにしていく。

「左近、しっかりしろ!」

左近を抱き抱えた右近の手を握り

「許せ右近…俺に力が有れば…。右近の足枷に為らずに済んだ…」

その手を強く重ね合わせ

「何を申すか!」

喰い千切られ空洞化したその部分を押さえる。

「左近!頼む逝くな!
この力…左近の為に使わずして…何の役に立とうか!」

流れ落ちた滴は無数に左近に染み込んでいく。

「父なる神よ!
此度のお役目見事果たして見せました故に我が願い聞き届けよ!」

天に向かい叫んだ。

暴走し続ける力に因りて
山々は土砂崩れを起こし
川は反乱し近くの木々を薙ぎ倒す

「何も望まぬこの地も必要ない!唯、我等を…

自ら放った落雷が右近を突き刺す

一つ…に…」

ぽうっっと光る淡い光は、
それを悲しむ様に静かに消えた。

「そっか…君はその時の土砂崩れに巻き込まれながらも懸命に生き延びたんだな…ありがとう」

木を見つめお礼を言う奴に

「ちょっと待てよ今のは可笑しいじゃねぇか左近に力がなかった」

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