幾千の夜を越え
詰め寄ろうとする俺を見えない
何かが阻み弾き返し後方へと
よろめかせた。

「慎輔…俺達は彼女から辛い過去の記憶を話して貰ったんだ。
礼儀を知らないのか?」

半ば呆れ気味に振り返る奴が、

石や木に対しこの仔とか彼女とか擬人的な見方をしてたことを思い出す。

「擬人的見方じゃない…」

行く手を阻む見えない力は

「ん!」

上から圧力を掛ける様に俺の体を押し潰していく。

「古くから在る物には神が宿る。まぁ…人間の俗説だけどな!
だが、実際に魂は宿るんだよ!」

すっかり平伏した頃、

「はい、お礼」

奴は俺の頭上から言い放った。

「ありがとう…ございます」

「はい、よく出来ました」

その瞬間、
俺を支配していた力が離れた。

「じゃあ…慎輔の疑問に答えてくれる仔を探すか?」

探すと言っておきながら
眼を閉じる奴を見ながら
奴の存在が異質な者から

神様なのだろうか?と疑惑を
持たせ始めた。

「この仔…かな」

指先だけで手元に呼び寄せたのは文字なのか絵なのかうっすらと…何かが刻まれた石だった。

「宜しく頼むよ」

ゆっくりと光り出した石を見つめその先に映し出された過去の残像に意識を奪われていく。

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